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日本の伝統芸能として、近年飛躍的に発展を遂げている和太鼓の優れた人材を発掘し、
国際的に活躍する奏者を育成するためのコンテストです。2002年に第1回目が開催され、以降毎年開催されています。
アートウィル代表の平沼仁一がプロデューサーを務めています。
  主催/東京新聞、財団法人浅野太鼓文化研究所、財団法人児童育成協会こどもの城
後援/文化庁、国際交流基金 (申請中)
協力/アートウィル
東京国際和太鼓コンテスト プロデューサー 平沼仁一
(アートウィル代表)
 透き通った緊張感が会場に満ち、審査委員、観客、そして、スタッフが期待を込めて舞台を見つめている。出場者の真摯な眼差しが、じっと最初の一打を待つ皮面に向けられ、気合いと共にバチが振り上げられる。

第二回東京国際和太鼓コンテストは、連日満員の観客と共に開催された。ブームと言われた時期から、和太鼓は確実に次の時代を迎えようとしている。コンテスト出場者ばかりでなく、太鼓に関わる人々は練習・指導方法・曲作り・演奏・演出などに、音楽的、身体的にあらゆる芸術、身体科学の分野からどん欲に吸収している。生き生きとしたエネルギーに満ち溢れた新しい太鼓の音が鳴り響いている。それを現すように、午前十時から最終組の演奏が終わる午後六時過ぎまで、立ち見まで出た観客はほとんど席を離れることなく、演奏を見守っていた。
 観客の一人は「午前中から観て途中で飽きたら、退出しようと思っていたけど、それぞれのグループが個性的で、結局最後まで見続けました」。とにかく課題曲が、グループや個人によって解釈や表現が違い別の曲に思えるほど、工夫があることに感動したそうだ。「単純な音の楽器だと思っていた太鼓が、これほど、表現の可能性があるなんて」。

このコンテストの特色は大きく三つある。ひとつは、プロ、アマを問わないオープン形式であること。そして、課題曲に取り組む事によって技術面や解釈、表現にひとつの枠組みを設けたこと。最後は、審査員を太鼓界や音楽家ばかりでなく、各ジャンルの第一線で活躍する著名人によって構成したこと。これらによって、自由な空気の中に緊迫感のあるコンテストになっている。
 また、審査員の了解のもと、審査発表のあと、各審査員のそれぞれの一位から三位までの発表と、総得点を掲示し、あと一歩で入賞を逃したグループにも、どの審査員が自分たちを評価してくれていたかを知る機会を設けた。

 第一日目、開会式は今回の和太鼓カレッジの講師でもある、元鬼太鼓座の座長だった高久保康子氏とTAKIO BANDの浅野町子氏の大太鼓演奏によって幕を開けた。「組太鼓青少年の部」は北海道から沖縄までの十組、九才から十五才までの総勢九十七名が参加した。全てのグループが、積み重ねられた稽古を基盤に練りに練った演奏を聴かせた。おそらく、地域に密着した活動と共に、指導者の多岐に渡る勉強と努力がそのまま奏者に反映されているのだ。

 生き生きとした音と流れのある構成が評価された「和太鼓祭座」(東京)が最優秀賞に選ばれた。特に既に雰囲気と型を持っている年少の子が審査員を感嘆させていた。沖縄から二年連続で本選出場を果たした、「真地風雲児太鼓」が明るい安定感のある演奏で優秀賞に、敢闘賞の輪島高洲太鼓(石川)は視覚的な演出が印象的だった。

 そして、午後三時から始まった「大太鼓部門」もまた、十一名の出場者による、高い水準の激戦を繰り広げた。特に一人打ちのバチの軌跡は、武芸者の気迫に満ちた刀の一閃に通じるようで、日頃の鍛錬が奏者の息づかいとして生々しく伝わってくる。全員が背中、二の腕、足の指先までの筋肉の脈動までが曲想を表現していた。
 最優秀賞は二年連続出場の川筋義也氏(福井)が音色豊かな安定感のある演奏で受賞、力強い打法の中野洋氏(鹿児島)が優秀賞に。そして、白熱した審議の末、敢闘賞は、塩原良氏(長野)、高篠雅也氏(東京)の両名が受賞した。また今回も岐阜から安藤王子さん、西洞有紀さんの女性二人が本選に出場したが、惜しくも入賞を逃した。
 翌日、本部に来られた川筋氏が、「優勝したこれからの責任を思うと、昨夜は眠れなかった」の言葉が、当コンテストの担っている意義を物語っていた。

 コンテスト二日目は、和太鼓カレッジの講師でもある、鼓童の齊藤栄一氏と元鼓童で、現在ソロで活躍する内藤哲郎氏による、大太鼓と太鼓群の共演で幕を開けた。北海道から長崎までの十四組、総勢百三十名が「組太鼓一般の部」に挑んだ。
 各グループ、課題曲の独創的な解釈、演出と、意表を突く自由曲の展開に客席は終始盛り上がり、大きな拍手と歓声に包まれた。

 最優秀賞は、音色の豊かさとセンスの良い演奏が評価されて「鬼島太鼓」(長野)。優秀賞は、息の合った調和の取れた演奏の「みのり太鼓」(茨城)、組太鼓の構成の良さを評価された、「松平わ太鼓」(愛知)が敢闘賞を受賞した。

 また、今年四月、第一回の審査員であり、大太鼓・組太鼓一般の部の課題曲の作曲家である石井眞木氏が逝去された。和太鼓どんどこ座(埼玉)が、哀悼の意を込めて、自由曲に石井氏の「モノクローム」を演奏したのが印象的だった。
 二日間に渡ったコンテストは、前回同様、技術的に非常に高いレベルだったと言える。次回、より打芸に秀でた精鋭が、より高い世界を目指して応募してくることだろう。

 和太鼓カレッジ  このコンテストのもうひとつの特色として好評を得ている、太鼓カレッジを三日間、同時開催した。
 特に、今回初めての試みとして、太鼓の教育指導者を対象とした1泊2日の合宿形式のセミナーを実施した。三重大学教育学部教授の中西智子さんをトータルコーディネーターとして、高久保康子さん、浅野町子さんを講師として、林英哲氏作曲の「千の海響」を題材に太鼓指導方法を学んだ。「音楽から何を聞き取るか」「私達らしさ」「学ぶ意欲」を中心に体験しながら学び、二つのグループが互いに違いを読みとる力を磨いた。練習成果発表では、参加者が熱い達成感に包まれた非常に有意義なセミナーだった。

 また、地下朱美さん、山本綾乃さんによる初心者のための太鼓の講座が一般の方にも公開の形で実施され、齋藤栄一氏、内藤哲郎氏による青少年と一般を対象とした講座も行われ、プロの奏者が作り出す「楽しみながら学ぶ空間」を、多くの参加者が堪能した。
「第2回東京国際和太鼓コンテストをふりかえって」(東京新聞2003年11月25日掲載文より)
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